Iron Steam D

正直なところエゴのでるスカーは珍しく、こんな周期で一人出会うとは思わなかった。それにおとなしそうなやつが脱走する勇気を持っているなんて。

 

とりあえず少年のために買わなくてはいけない。

麻酔は少し遠くに行かないと売っていない。大体のものは専売特許が申請され国が保護する対象となっている。専売特許というものは利益を独占するのにもってこいな仕組みだ。そのせいで駅を2つ乗り継がないといけない。ここまで郵便が来ればいいが、こんな郊外には来るはずがない。需要がないからだ。

 

こんな武器を持ち歩かないと死と隣り合わせのこの郊外は危ないし。金のない者たちが住むところじゃ何が起こるかわからない。私でも短剣を一本持ち歩くだけでもしないと行けないのが面倒くさい。

やろうと思えば私の武器ででかい穴を開けることもできるが、できない。

 

看守はどこにでもいる。

 

下手に使えば怪しまれる。 別に買ったと言えばすむことだが、同化するし。一番は銃器を使うことが難しい点である。普通銃弾を買うだけでも、十発で郊外に家が一つ建てられる程である。そして免許を必要とし管理され、月にとてつもない額を請求されるからめったに持たない。

それに今時の売っている装備であれば銃弾なんて弾きかえされる。だから持つ人は金持ちのやつか、無視するやつしか持っていないんだ。

 

駅に着いたので乗車券を買う。これから行くのは決して安全ではない。なんならさっきまでのほうがマシであろう場所だ。電車に乗る。でかい鉄の塊は唸り声をあげドアを締め動き出す。でかい物体が加速レールに乗った瞬間、とてつもない速さで駅に向かう。体感1秒もないくらいだ。やはり私はまだ慣れない。

到着すると気持ち悪い音楽が流れ扉がひらく。

 

「第6ブロックか」

 

第6ブロックはこの都市部の影であり郊外との境がほぼないに等しい。だが、安全なのは政府が見ているからだ。アイツらほど強力な軍はいない。短時間で的確にターゲットだけを殺し

必要であれば殺傷し、2,3人で10人は相手できるだろう。この世界で恐れられているものの一つでもあった。

私は駅を出てバスに乗る。麻酔屋はここから10分ほど。何も起こらないことを願う。

タバコを取り出し火をつける。

タバコは消耗品だからキセルにしようか考えていた。道のところどころの路地道には子供の死体や、守っていたであろう大人の死体が転がっている。

麻酔屋の近くに着きバスを降りる。

はぁ。目の前から、何やら刀を持って向かってくるやつがいる。やはり影は安全ではないらしい。

 

「よぉねぇさん。こっからは通行止めなんだ。どうしても通りたいなら、金落としてきな。」

 

「どこの事務所かは知らんがどいてくれ。お前らとじゃれている暇はない。」

 

私はそのまま歩き続ける。腰に手がずっとかかっている。いつでも剣を抜ける準備はできている。

見る限りあいつらは素人だな。通行料を払わなかったやつをただ殺してる。素人なのは、その死体を隠したり、ランプの代わりに飾っていないように工夫がない。おそらく、7人程度のあいつらなら私でも相手ができる。

 

キーン

 

話しかけた男は地面に刀の鞘をたたきつける。その衝撃でコンクリートの地面には軽くひびが入った

 

「もう一度言うが、通行料を払うんだな。お前も見ただろ。あのへんに転がっている死体。ああなりたいのか?」

 

「私はそんな幼稚な挑発には乗るタイプではない。」

 

少し大声で言ってやると、一人痩せた男が走ってきた。

私はやつの腕を掴む。そして膝蹴りで骨を折った。そして剣の鞘でそいつを気絶させる。

 

「その程度の筋力じゃすぐに殺されるぞ。」

 

よくこんなので人を殺そうと思った。まぁ一般人なら殺せるか。他の奴らは、刀を突き刺す形で持っている。

串刺しか。

走ってくる。あいつらのスピードなら十分太刀打ちができた。一歩後ろに下がり、剣を取り出す。

力を込めると、鋼鉄の剣は、赤くなり溶け出した。

鞭の形ならこの程度殺せる。鞭は相手の足に絡みつき赤く燃え上がりながら焼き切った。

二人が足を失い倒れ込む。おそらく経験したことない痛みだろう。切り傷程度の痛みからこれだと気絶するだろう

。同じようにほかの敵を相手する。奴らはなすすべなく倒れ込み悲鳴を上げて苦しんでいる。私はポーチから包帯と止血剤。そして水を出し奴らの前に置く。素人ならこれで諦めるはずだ。傷は彫っておいた。

 

「次こんなことを私の前でするなら次は四肢を切り刻むからな。」

 

脅しだけ入れて私は店に向かった。店は小さな路地の裏。5,6階のビルの一階である。

唯一の麻酔専門店だ。私は木と鉄でできた、小洒落た扉を押した。中は思ったよりも綺麗で、麻酔の原料であろう様々な植物が育てられている。

そして一番気になったのは、この部屋はおかしい所だ。ビルの大きさの6倍の広さの部屋と奥にあと二部屋はありそうだ。それに明らかにこの世界の景色ではない。透き通り電気で輝く水が湧き出ている。

それらで植物に水が供給されている。そして植物たちは生き生きと動かない疑似的な太陽に花を咲かせている。都市部の水はほとんど汚れて飲んだり使うことはできないはずだ。

 

「すみません。誰かいますか?」

 

私は声を張り上げて丁寧な口調で言った。すると奥から誰かが出てくる。いや誰かというよりなにかだな。人と言うよりロボットに近い。腕の関節には歯車が露出している。

痛みを感じないように、体の一部を機械化するやつもいるが、ここまで機械化されていると法に引っかかるな。国は大量的な破壊を防ぐためにロボットの製造は禁止している。特許申請店が法に触れることはないだろうから特には言わないでおこう。

 

「麻酔が欲しいのですが、ありますか?」

 

するとそいつは、金属音をたてながら喋りだした。

 

「そこにある植物から好きな組み合わせで葉っぱを三種類取ってください。持ってきたら作ります。

ものによって時間が違うので注意してください。」

 

顔の割には流暢にしゃべる奴だ。

 

「なんかいい組み合わせはないのか?」

 

知識がないため理解がし難い。

できるだけ安価であいつに刺激が少ないものが良いだろうがそんなものあるのだろうか。

 

「すべてはあなたの気持ちですのでお好きに選んだください。特定の目的がないのでしたら、全て効果はおなじです。」

 

「刺激が少なくて痛みを全くあとになって感じないようなものはないのか?」

 

植物を手に取りながら後ろの店主に話した。2、3秒したあとにピピッという電子音がなり、歯車の回る音が聞こえだんだんと大きくなっていく。なにをやっているんだ?見ない間にどこかにいってやがるな。

5分もしないうちにレンジのチンッという鐘のような音の後にやつが上から出てきた。

やつは小さな箱を手に持ちこちらに来た。さっきは机で下半身が見えなかったが、

歯車やら部品やらでキャタピラで動いていた。

 

「こちらがお望みの品です。さきほどおっしゃった『刺激が少なく使用後の痛みがない』ものです。値段は変えられません。」

 

そういうとなにやら紙を差し出した。請求書だろう。

 

「う‥ほんとにこんななのか。」

 

描かれていたのは670000。

六十七万。とは痛手すぎる。

一応あるにはあるがそれだと事務所を運営しきれない。普通の店なら気に入らなければ切り捨て方式だが

政府と契約を結んでいる以上変に攻撃すると軍に殺されるだろう。そして犯罪者としてメインストリートの影に干される。

 

「なぁもうちょいなんとかならんのか?」

 

「痛みや効果時間の変更などで料金も変わります。いかがでしょうか?」

 

私はあの部分を一度神経を切って感覚機能を消してから復活させたが、そのときにはあの人がいた。

自分でなんとかできるわけがない。でもしょうがないのか。

 

「効果はそのままでいい。時間と刺激指数だけ下げてくれ。それで買う。」

 

また上に上がり2分後に下がってきた。こちらになります、と店主は言う。今度は24000。相変わらず高いが独占市場で値段を下げる必要はないか。これでいいと私は店主に言い会計をした。何か言いたそうだったがまぁいい 。私は会計を済ませ店の扉をめがけて歩いた。しかし、最後にこんな言葉をかけられた。

「おまけです。」掠れた小声だったが私には伝わった。彼は初対面なのだが...

 

帰路の終わり。朽ちた電灯が光始めている。下には人の死体。そんな舞台袖を眺めつつ事務所につく。そこは血がついた廃ビル。二階の窓には顔が張り付いている。

階段の前には大きな切り傷のついた死体が2個。

紫のズボンと黒のアーマー。そして肩には、行きで交戦した事務所の戦闘員についていたバッチがついている。

 

「くそ!」

まさかあの短時間でこの事務所だと特定したのか。あの少年は無事なのか。

しかし一番気になったのは一体誰がこの量を殺したのかというところである。あいつではないだろうし...。私は麻酔のことを考えずに階段を駆け上がった。ドアの前には壁に槍ごと突き刺さったリーダーらしき死体。そして気づいた。この傷は...あいつか!壊れた扉の中にはソファに座る1人の男。

 

「おおぅ、やっと帰ってきたか。すこし楽しませてもらったぜ。」

 

やっぱりだ。

 

「パークお前か?アイツら殺したの」

 

そうだと答える。

 

「ラウンジはどうした?」

 

煙草の煙で方向を指す。すると机の後ろの扉から出てきた。顔に切り傷があるがなんとか生きているようだ。

 

「全然無事だ。ちょうど良かったよ。もう少しだけ俺が遅れていれば死んでたな。俺がお前さんに仕事を押しつ...失礼。仕事を共有しようとうと思ってきたらなんか変な奴らが前にいてな、その時階段で怒鳴り声だのドアを壊せだの聞こえたから軽く相手してやったが...アイツらなんなんだ?」

 

全然下心丸見えだが、まあいい。

 

「あいつらは今日行きに私に襲いかかってきた事務所の戦闘員だろう。人数からして規模はでかそうだ。通行料を払えだの言ってきたから郊外のこの辺のブロックの組織か。それに短時間でここを特定したということはそれなりに顔の広い大きな組織だろうな。」

 

いずれにしろ感謝する。私はそういうと…。

 

「なぁパーク。少し手伝ってくれるか。手術をしたい。」

 

あいつは、酒があれば。と了承した。あの人とパークが私の手術を手伝ってくれた。

訳もわかっているしやり方もわかっているはず。

 

「本当にいいのか?あいつはいないが...協力はするがお前次第だぞ。」

 

あいつは真剣だ。いつもはだらけているがやるときはやってくれる。今回は麻酔があるから神経を切る必要はない。私は寝ているラウンジにメスを突き立てる。予想以上に効果があるのかピクリともしない。

メスが冷たい皮膚に入り込んだ。そして赤く鮮やかな血が溢れ出てきた。パークに止血を頼み、私はコードのある腕と肩の付け根にメスを入れていく。心臓がどんどん早くなり、熱い鼓動へとかわっていった。そして見つけた。そこには小さなオレンジ色のチップと青色のチップ。この2つを取り除けばいい。ピンセットを近づける。そしてこれでもかという力で抜いた。

 

「出したぞ。」

 

私は安堵し今までの工程を巻き戻った。全て終わり、私はチップを見ていた。

その時にあることに気づいた。

 

「ん?これは?…もしかして....!お前は。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「大丈夫か?左肩は痛くないか?」

 

静かに瞼を開き意識を取り戻す。左肩を見ると何も描かれていない。どうやら手術は終わったみたいだ。

 

「コアさん終わったんですね。良かったです。」

 

なんとかなっとコアさんは言ってくれた。僕は何も感じていないけど、たぶん相当な痛みだったんだと思う。それをコアさんは耐えている。本当に凄い人だ。コアさんはパークさんとご飯にしようと言ってくれた。僕は立ち上がり、腕を動かす。全く痛くないのに驚いた。覚悟していたけれど……凄い麻酔を買ってきてくれたんだろう。後で感謝しないと。僕は部屋を出てテーブルに向かった。

 

「パーク。最近結構楽しい仕事が入ってくるしラウンジも守ってくれたからな、お前の好きなシャンパンだ。」

 

「おう、ありがとよ。今思い出したんだがそういえばお前は12ブロックには結局行かないのか?」

 

「あそこか?迷ったがやはりこのぐらいの影薄さのほうがバレにくいな。」

 

「12ブロックってどんなところなんですか?」

 

「そうだな。かんたんに行くとブロックごとにルールがあるだろ?」

 

ラウンジはうなずく。

 

「ブロックの中で唯一殺人とか窃盗が許されていないだよ。だから組織の奴らはめったに行かない。だから安全なんだ。」

 

「本当ですか?一度見に行ってみたいですね。」

 

「まぁそうだな。パーク、私が仕事してる間に連れて行ってやれよ。」

 

「まぁいいが、でもよぉ、ーーー」

 

パークと目を合わせる。ラウンジはわからない顔をしている。足音が聞こえる 。防音にしてあるから外には漏れていないはずだが誰が来たんだ?窓とカーテンとの間に黒い物体が見えた。

嫌だがあいつと戦うしかないようだな。この音と一瞬見えた影はあいつらしかいない。

扉の向こうにはあいつらがセットしている。

 

「完全に包囲されたな...ラウンジ、荷物をまとめてくれ。」

 

「俺は首にはなりたくねぇが、しょうがねぇな。」

 

しばらく静寂が周囲の夜とともに包み込む。あいつらは機会を伺っている。軍の執行部隊。夜に行動し、確実にターゲットを殺害する。数が多いのもあるが、あいつらはエリート中のエリート。スカーのトップでも楽には倒せない奴らだ。

 

23時。針が時刻を知らせたとき、扉がひらく。閃光と共に血が散った。パークの槍が二人を貫く。それとともに窓から侵入しようとしてくる。特注ガラスで救われたな。びくともせずあいつらは困惑しているようだ。荷物を持ったラウンジを抱え走り出す。パークは外で暴れまわっているようだ。大剣の輝く軌道とあいつらの得体のしれない武器がぶつかり合い周囲をともし続ける。私は、地下室の扉を開けラウンジを入れるとパークの元へ向かった。

 

「大丈夫か!」

 

現場は血でまみれ、四肢が飛び散り内臓が飛び出た死体ばかりが散らばっている。真ん中には一人、血だらけの男が立っている。

 

「パーク!お前…全員やったのか?」

 

「あぁよ、手応えがねぇな、結構期待してたんだがな、本気でやったのが馬鹿だった。」

 

いくらなんでも早すぎる。6分はたっていないはずなのに…。偽物かと疑ったが、死体のバッチには軍のマーク。それも星が5つのハイトクラスの奴らだった。

最高クラス『リヴァイアサン』クラスと続いての5番手の部隊だった。それが13人はいる。そいつらを相手してほぼ無傷とはな、恐ろしい限りだ。

 

「ここは早めに離れたほうが良さそうだな。こんだけの損害が出た以上、軍の奴らは黙ってないだろうな...」

 

「お前はどうなるんだ?警察は実質軍の傘下組織だろ?軍の1部隊を全滅させた以上、軍どころか、政府に狙われるぞ。」

 

あいつは、「今までなんのために戦って来たと思ってんだ。」と少しニヤついていた。血溜まりに青いライトが照らし始める。深夜に入ったという合図だ。この時間帯になると犯罪が増えるため警鞭のうろッチには軍のマーク。それも星が5つのハイトクラスの奴らだった。

最高クラス『リヴァイアサン』クラスと続いての5番手の部隊だった。それが13人はいる。そいつらを相手してほぼ無傷とはな、恐ろしい限りだ。

 

「ここは早めに離れたほうが良さそうだな。こんだけの損害が出た以上、軍の奴らは黙ってないだろうな...」

 

「お前はどうなるんだ?警察は実質軍の傘下組織だろ?軍の1部隊を全滅させた以上、軍どころか、政府に狙われるぞ。」

 

あいつは、「今までなんのために戦って来たと思ってんだ。」と少しニヤついていた。血溜まりに青いライトが照らし始める。深夜に入ったという合図だ。この時間帯になると犯罪が増えるため警察が動き始める。この惨劇場を見られたら、私もだがラウンジの身も危ない。手術もしたてだからあと3日は放置しないと治らないはず…

 

「とりあえず考えた中で一番安全な12ブロックに行って、しばらく身を潜めたほうが良さそうだな。俺は支部にいちど戻る。帰ってすぐに一つ家を手配しておくから向かってくれ。しばらくしたら連絡すっからそれまで待ってくれ。」

 

パークはそのまま道を進んでいった。こうしちゃいられない。

 

「ラウンジ、12区に行く。少し待ってろ。」

 

私は、事務所ビルのガレージからバイクを持ち出す。一般的な大型バイク。この時代にタイヤは古いが、昔の道路がまだ残っている。そこを使えば歩きで16時間の道を5時間で行くことはできる。

古いため少しガタつくが、十分に息を吹き返していた。

準備をすすめ、荷物をバイクに乗せたとき、中央の道の奥から大勢の人が来る。警察なのか?

だがその考えは覆された。よく見ると左肩が、うす青く光っている。そして、様々な表情や形の仮面をしている。

そう、あの気配こそ軍と互角に戦える戦争兵器であり戦闘兵器。

 

「スカー...なのか」

 

まずいことはわかっている。だがここに来たということは、軍からの指示なのか、それともバレたのか。考える余裕なんてない。

 

「行くぞ!乗れ!」

 

ラウンジは、走って向かってきた。私は、ラウンジを前に、座らせ、抱える形でハンドルを握り回す。アイツラとは逆方向に逃げた。だが、もし存在が気付かれていたのなら、とっくに撃ち殺されていそうだ。

 

.............

 

「覚えていますか?」

「えぇ覚えています。」

「鮮明に?」

「鮮明に。戦場で暴れまわったやつの事。」

「あと一人は?知っていますか?」

「見たことはない。だが兄弟だ。」

「私もそう思います。」