Iron Steam C
扉が叩かれ、私は扉を引いた。目の前には3人の男。蜂の巣柄のロングコートに黒いシャツ。白い模様の入った刀を持っている。
組織の一人だ。あとの二人はおそらく警備用のスカーだろう。
「いらっしゃいませ。どのご用件ですか?お金持ちの方がこんなところにまでどうも。」
慣れない敬語を使う。片言になるがまぁいい。
「この周辺に右肩にUIー6846というマークのついた人間を見ませんでしたか?」
丁寧な口調に体が間に合っていない。身体強化をしたのだろうか。ゴツゴツである。
とはいえ、外ではスカーを人間と呼ぶのは初めて知るな。
「いえ?見ませんでしたね。私は今日近くの学校で警備をしていましたので。」
彼は少し私を睨み付けたが、すぐに表情を緩め帰っていった。すぐに扉を閉め、防音装置を起動した。
心臓がどうにかするかと思った。ワンちゃんバレるかもわからないから怖い。
私はコーヒーを一口淹れたあと、空間からラウンジを引っ張り出した。彼はこの状況下にも関わらず平常心でいる。怯えてると思ったが見当違いのようだ。よろけた服からはみ出る方に眼をやるとUIの文字があった。組織の奴も言っていたが、お前って情報系なんだな。
スカーには色々いる。
戦闘系・情報系・探索系・警備系など
それぞれUのあとにAttack・Information・Seach・Guardというアルファベットの頭文字が描かれる。それで役割を基本的に区別をする。
私は戦闘系だから、UにAが最初の認識コードにつく。あいつは情報系ならこちらが有利になるかもな。
それに情報系のスカーの持つ武器は珍しいから興味もある。
「アイツらは遠くに行ったな。そうだな、お前の武器出してみろ。」
「え?どうして?戦うんですか?」
「ん?お前スカーだろ?武器ぐらい出せるだろ。それに情報系の武器を見てみたい。」
渋々少年は了解すると、手を前に掲げ手からロウソク程度の光を放ち始める。そこまでではないが、その光が少しずつ形取られ、そして微弱な光は消えていく。すると手に金属質の棒に先端はU字で角ばっているものを発現させた。棍棒かと思う。もしくは切断機器の一種か。
「僕の武器はこれです。精神力を使って自由に高温の粒子光線を出すことができます。」
「魔法のステッキかなにかか?」
魔法?と知らなさそうなのでやっぱいいと云う。ビーム兵器といえば、銃型や大砲型、または剣型が思い浮かぶ。雑誌にもその程度しか載っていない。本当に興味深い武器が出てきた。試しに撃たせてみよう。
私は灰皿に使った煙草の着火部分をこすりつけると
「そうだな。じゃぁ私のタバコに火をつけてくれるか?」
タバコが無くなったので新しいのをつけてもらうことにした。ただ外れると困るがな。
私はタバコを口にくわえ少し前に出す。いざというときのために耐熱クリームを塗ったため安心はできる。
少年は手が震えている。そりゃこんな小さな的に10メートルほど離れたところから撃つとなると流石に辛いであろう。少しして彼は眼を見開き、杖の先端から光を照射した。見事にタバコの先端に火がついたが、熱い。顔の前を通り過ぎた高熱の粒子は周りも熱くする。射線上を辿ると、壁が少し溶けていた。耐熱塗布をつい3日前に行ったはずだが...相当な熱が加えられている。
合格。私は満足に言うと少年は疲れを表しその場で座り込んだ。まぁ無理はない。
今気づいたが、腰になにか杖をつけている。杖と言っても傘の柄のような杖である。
「その腰のはただの杖か?そうは思えないが。」
少年はこちらをはっと見ると立ち上がり、杖を掴んだ。
「まぁ固有武器は常に出すわけにはいきませんからね、バレますし。」
持ち手と思われるところから銀色に輝く隠し刃がでてくる。まだ血に汚れていない純粋な刃だ。
「そういえばお前、情報系統だったんだろ?ちょっと見てくれよ。」
確定したわけではないが信用はできた。パソコンに案内し、あるページを見せる。
そこに移しておいたのは奴らの位置。さっき握手をさらっと求めたときに
やつのロングコートの下部につけておいた。高性能GPS。3日前に1時間以上並んで買った新品だ。
「そいつのデータをこっちに送ることはできるか?私にはさっぱりだ。」
彼は少し考えパソコンを弄くりだす。2,3分ほどしたあと
「腕時計貸してもらえますか?」
用意ができたらしい。渡すとすぐに作業を始め、少ししたとき完了した。さすがだな。
色々改造も施されさっきよりもスタイリッシュになっている。
「リアルタイムで送るには少し改造が必要でしたので少しだけいじりました。あとついでですがコンパクトにしたんですが…」
「ふ、すごいじゃないか。完璧だ。ここまでとは思ってなかったよ。」
なかなかに凄い子が来たものだ。こいつは保護する意味が結構あるな。これでこの区の看守の一部は居場所がわかるから行動がしやすい。
あとは…
「じゃぁ手術道具買いに行くから待っててくれ。くれぐれもあまりものに触るなよ、警報がなったら即終わりだからな。」
私はポーチと剣を持つと一人残して買い物に出た。