Iron Steam A

私は戦うために生まれて、そして軽く死んでいく運命。すべての仲間たちは、痛みに疑問を持たずにただただ、舞台に立った人形のように殺し合いという台本を広げる。

私は愚かだ。この戦争と殺し合いが当たり前の世界で戦うために生まれてきたやつが、エゴを持つことなど許されるはずがないのに。

 

 

逃げ出した。私は自由にいきたい。

 

 

 

今日も変わらずこの部屋は圧迫感がある。

私はコーヒーを淹れ背もたれの高い椅子に座る。

私は戦闘用の兵器であり、普通はこんな生活をしない。私の構える事務所はこの世界ではありふれた戦闘と探索専門である。

組織を逃げ出した私は、この世界で生きるために

偽造や手術を重ねたり、培った戦闘能力を活かしこの事務所を立てたりした。

仕事は今のところ入ってきているが

そこまであるわけではない。そりゃ、外を見ればわかる。閑散とし、所々に血がはねて固まっている。そんな街にあるところにまで仕事を持ってくるか。

ドアの前にある階段からコツコツと靴の音がする。客が来たのか。私はタバコの火をもみ消すとその場でたった。

入ってきたのは藍色のロングコートに身を任せた制服が爛れた警察官だった。

 

「なんだお前か。今日も職務怠慢か?」

 

相変わらずだな。と奴は笑顔で答える。奴は’パークというくそ警察官である。だらしないが、戦闘はピカイチだ。が、態度は気に入らないやつである。

そんなやつのために消したタバコがもったいなくなり舌打ちをしたのち、もう一つに火をつける。

 

「いや?今日は少しばかりちげぇでな。」

 

いつもの探しものの仕事ではないらしい。

 

「今回は楽しめるのか?」

 

タバコをふかす私は間抜けそうに質問した。

奴は応接用のソファに座りポケットから何やら紙を出した。きれいに折りたたまれた紙は契約書のようであった。この世界では契約書は必須だ。

見てみると、依頼主は近くにある学校だった。

また仕事を押し付けるのか。ため息をつく私に、奴は「俺は悪いやつは殺しはするが付添はしねぇよ。」

とふざけたことを言っている。契約書を見ていると私は結構乗り気でいた。報酬が結構積まれているからだ。この世で金は全てであり権力である。

契約書を破れるくらいにまでみたあと、私は同意しサインをした。時間は明日。目的はこんな世界で唯一平和な文化祭の警備である。主に金持ちの子供だが。

 

「あとはよろしくよ、向こうには話はつけてあるからよ。」

 

私に拒否権はなかったようだが別に今回は気にしない。明日の仕事は少しばかりらくできそうだなと一人で安堵した。

次の日、私はコーヒーとサンドウィッチを食べたあと、ロングコートを羽織り、ポーチを持ち事務所を出た。硬い灰色の地面に革の靴が鳴り響く。まだ電灯が点滅し、浮浪者は路上で寝ている。朝早いため冷たい空気と血の臭いが少し感じられる。メインストリートを30分ほど歩くと学校に着いた。正門を探し、向かっていると男三人が出迎えた。サングラスにスーツのゴリゴリ。他にもいるらしい。

 

「おはようございます。あなたがコアさんですね。今回の警備を担当するコーリア家のSP、カートンです。よろしくお願いします。」

 

コーリア家がいるとは驚いた。この地域で有名ないわゆる金持ちの家系である。さすがにお嬢様には専用がいるらしい。

 

「レイ=コアだ。学校側に雇われたから勝手にやらせてくれ。よろしく。」

 

なるべくぱぱっと終わらせるのが私のモットーだ。めんどくさいことを続けるのは体力がもったいない。SPが私に「ついてきてください。」といわれ部屋に案内されると、さっきのボンボン家系が支援をしたのか、外観の都市っぽい金属の硬さとは違いとても柔らかく上品できれいである。

 

いつも使う小さな黒い剣と証明書を手に持ち校長のところへ向かう。(さっさと挨拶を済ませよう。)

豪華な扉にノックをした後返事がしたので躊躇いなく入る。

正面に座るメガネをかけたボンボンの犬がこちらを見てお辞儀をしている。

 

「いやいやこんな朝早くからありがとうございます。この学校の校長のファリム・ヤトと言います。今回はどうぞよろしくお願いします。」

 

私はよろしくとだけ返事をする。

そして家にあったメロンを渡すとごきげんそうに笑った。ちょろい。

すると後ろから何やら騒ぎ声が聞こえる。

登校の時間になったらしい。私は渡された警備ポイントの記された紙を見るために待機室に向かった。

しかし面倒は起こるものだった。

 

「あなたが私の護衛?」

 

突然正面に少女が現れ私に話しかけた。

私はそんなことをするのか?警備とは聞いていたが生徒の付添とは聞いていない。

 

「どうしたお嬢様。私はただの警備だぞ。」

 

くそ。めんどくさいことになった。気風からして例のコーリア家の娘だろうか。上品っぽいが礼儀がなっていないな。するとすぐに後ろからぞろぞろとさっきのSPが来た。私は逃げるように待機部屋に入った。

紙には目立たないようにすること、朝と帰りの校門警備以外は自由に回っていいこと。最後にはSPと協力することとたくさん書いてあった。私は部屋を後にし、この後の警備につくことにした。

 

午前8時半。私は校門の前で突っ立っている。

ぞろぞろと保護者やらが入ってくる。

9時半。ある程度人並みは収まり、私は校内の警備に出た。平和な祭りである。飲み物屋、焼きそば、パン。そんな店が多く並んでいた。期待していたのとは違って残念である。殺し合い人肉BBQパーティーとか目玉早食い大会屋とか。そっちのほうが面白い。実際ここではないが、17ブロックではこのようなことが行われていたのを知っている。ひたすら眺めるだけだが脱走した甲斐があった。普通に暮らせているのだから。

10時。なにやら体育館の方で騒ぎがした。すれ違うものは皆青ざめていて目は混乱一色になっていた。

やはり今回の仕事もかんたんには行かないようだ。私は騒ぎに駆け付けた例のSPの部下とともに現場に向かった。伝わってきた大きな振動は、私に興奮と期待を与えた。

 

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