Memory of your Voice Ⅳ

【第4節食事】

様々な香りに誘われ付いた先には綺麗に置かれた料理が並んでいた。

汁物に焼き魚、米らしきものに野菜や煮物などいかにも和風の料理であった。

この量を人数分そして短時間で作れるとはどちらかというと料理よりそっちのほうが気になっている。

全員席に座りエフさんが手を合わせて同時に、
「それじゃぁ今日もいただきます。」


この掛け声とともにみんなで食べる儀式をした。

ゆっくりと全員が食べ始め、なごやかな会話が始まった。
「今日のデザートってなに?」

「まだ飯食ってんだからそっちを優先しろ。」

コンさんの対応は冷たいが、会派に温かみが感じられた。でもこんな家族のような風景に何故か懐かしさがある。向こうでもこんな会話があったのだろうか。

あの時は名前が思い出せないだけだったのに、今ではこんなことすら思い出せなくなっていた。

これではどの本が自分のなのかわかるのかという疑問が浮かぶ。
本当にあってもそれが僕の人生か思い出せなくて解決しなかったらどうしよう。そんなことを考える。


「どうしたの?具合悪いかな?」

アヤさんが声をかけてくれた。そりゃこんな明るい所で一人黙っていたら気になるだろう。

「いえ、今日のことを少し考えていて…」

大丈夫ですよ、と言うと少し心配そうな顔だったがよかったといってくれた。


「そりゃこんな非現実的な空間に来たらそうなるだろうな。」

僕はエフさんのこのときの言葉に少し引っかかった。どうしてここが非現実的と思ったのか。ここで生まれたのならこれが普通になるはずだし…

あとで聞いてみよう。


しばらく、ここでの暮らしだったりを話してくれた。
普通に生き物はいるらしい。魚とか動物、植物などそしてそれらは本から出せるという。料理したものはできないそうだが、材料は本を使って調達できるらしい。便利なシステムだ。それがこの世界の本の力で、まだまだ可能性は未知数らしい。

時間も24時間の世界。さっきまで明るかった外も
夜になりランプの灯りが広がっていた。

食べ終わり儀式も済ませると

「エフさん、あのお話があって…少しいいですか?」

とエフさんに尋ねた。エフさんは快く了承してくれ、片付けをアヤさんにお願いした後二人でバルコニーに向かった。


バルコニーは風がなく涼しい所ですごく落ち着くところだった。

少し周りを見渡す。バルコニーからは星が見え幻想的な景色だった。

すると後ろからきたエフさんは、「いい雰囲気でしょう?私もここの雰囲気はとても気に入っています。」おいてあった椅子に座り、僕にも座るように言って、「話ってどうしたんだい?」と続けて言った。

あの…っといいかけた時、ドゴゴゴゴっと大きな音が鳴った。すごい振動で、なんだかわからなくなり僕は反射的にしゃがんでいた。この音とともにエフさんは奇妙なことを言った。

「やつらか…」

そして僕のそばにより、真剣な眼差しでこちらに目を向けて言った。
「いい?アヤとフライ君で地下に逃げてください。そこなら安全ですから。」

僕はなにがどうなってるのかわからなかった。危険なことが起きているのか?

「早く!」
その言葉とともに僕は立ち地下へ逃げた。

入り口にはアヤさんが待っていた。案内され一緒に地下室へ向かった。
地下室はだいぶ広く、シェルターというわけではなさそうだった。ここに三人と3匹逃げ込む。僕はアヤさんに聞いた。

「エフさんとコンさんはどこに行ったんですか?」

あの二人は今何をしているのか。大体は見当がつくが信じたくなかった。

「あの二人は、今戦っているの。」

想定していた最悪の事態だった。戦うということは敵がいるのか。


「この際説明しちゃうね。今の音は夜に出てくる化け物。本には『食事人』って書いてあるの。数が多くて強い生物で、今二人は食事人と戦っているの。」


あの時フライ君がここなら安全とはこのことだった。夜になると出てくる化け物。

話によると、普通は攻撃性がなくこちらが害を与えなければいいのだが、たまに狂暴なやつが光を目指してここに侵入してくるのだという。食事人は名前の通り夜になると食事をする。これにより動物などは死んでしまい、あまりいないのだという。二人が戦っている間ここにいるしかない。戦えるのはあの二人だけらしい。


なにかやくにたてれば...無謀だがこんなことを思う。なにか協力できることはないかな。振動が地下にまで伝わってくる。小さなものに大きなもの。どんな大きさの生物と戦っているのかわからないが、たぶん大きいのだと思う。この後30分程度たったあと、振動がなくなり少しして扉が開いた。上にいたのはコンさんだった。だが深刻そうな顔をしている。階段を駆け下りてくると彼女は焦った口調で、


「エフがやばい。早くきて!敵は倒した。」

この言葉を聴きアヤさんは走って階段を上がりコンさんは僕たちにこう言った。

「手伝ってほしい。」

僕は立ち上がり一緒についていった。できるだけ役に立てれば。僕はその思いを胸についていった。