Memory of your Voice Ⅲ

【第三節・居住】


木でできた廊下を歩く、前には頭3つほど高い館長のエフさん。
オシャレなランプでともされた道のわきにはそびえたつ本棚。

(こんな量の本から立った一冊の本を見つけるのか…)
当たり前だが気が遠くなるような作業だと感じる。

 

「あの、最高どれくらい古い時代の本があるんですか?」

 

この量でも始まりがわかればやりやすそうだと思ったので尋ねてみた。

 

「あ~そうだね、俺が見た中では、縄文の人だったかな?書いてあった生活が縄文だったね。たぶんそれよりも昔のがあると思うんだけど文明だったり言葉が発達していないから抽象的に書かれていそうだね。実際縄文だと思う人もその人が見た風景ばっかで言葉はほとんどなかったから。」

 

その瞬間、この世界全人口だけでも途方もないのにプラス約一万年分の人の本があると絶望した。聞かないほうが良かったのかもしれない。それから数分歩いているうちにエフさんは立ち止まって僕に言った。


「つきました。ここが私たちの家です。」


前には巨大な木がそびえたっており、周辺はカルデラのように囲まれ自然豊かな場所になっていた。巨大な木には窓のようなところやバルコニーのようなものも見え、家だと認識することができた。家へと続く道に入り向かっている途中には川や湖があった。とても透き通っていて周りの景色が反射して水面に映っている。きれいな景色に見惚れながら家の近くを進むと、一人ドアから出てきて僕たちを迎えた。

 

「エフさんおかえりなさい。お疲れ様。」


出てきたのは茶髪のショートヘアでいかにも司書という落ち着いた洋服に身を包んだ若い女性だった。明らかに穏やかなオーラを感じる。

 

「あれ、君は?」

 

質問されたが答えることができない。不思議そうに僕を見たがすぐに状況を察してくれたようで。

「とりあえず中に入ってゆっくり話しましょう。」

 

そういって彼女は後ろを向き玄関に向かって歩き出した。

それと同時にエフさんは「行きましょう。」っと口にし女性司書の後をついていった。玄関の前に付くとその壮大さに改めて気づく。木の周りにはところどころにランプが釣り下がっていて日が当たっているとはいえ明るすぎるくらいに光っている。

 

「どうぞ入ってください。」

 

エフさんは優しい表情で言った。


「おじゃまします...」

 

中に入ると、なんというかすごくオシャレな場所だった。あたりを見渡しながらこんなところがあるのかと感動していた。しばらく見渡した後、エフさんに案内されダイニングのような所に行くと、そこには先ほどの司書ともう一人、僕と同じくらいの歳の子が一人お菓子を食べて座っていた。その子は僕を見ると隣のエフさんに「この子は新しいカゾク?」と言ったその子は今カゾクといったか?この子にとってここに来るということは家族なのかな。


「紹介します。今喋った子がフライ君で向かいがアヤ。二人とも此処の司書です。」


「この子は今日から暮らす…そうだね。呼びやすい名前をとりあえず決めよう。」


「そうですね。」

 

どうやらここにいる人たちは事情が分かっているようだ。あの例外というのを分かってくれていた。

 

「そうね…君何か呼ばれたい名前とかある?」

アヤさんは僕に優しく言った。

「ないです…(実際の所何もないし、あったらちょっと変に思われそう)。」

 

そこでお菓子をすべて飲み込んだフライ君が言った。

 

「じゃぁ、今日からファイル君ね!いいでしょ!」

 

僕は突然いわれてびっくりした。外国人のような名前だな。

「まぁわかりやすいな。かっこいいと思いますよ。」
「私もフライ君の意見はいいと思うよ。」

二人は賛成の様子でこちらに「どう?」っと返しに困る投げかけをした。どうすればいいか分からなかった僕は、少し考えて「じゃ、じゃぁそれでおねがします。」と言った。

「やったー!ファイル君!これからよろしくね」

 

実際に言われて見て違和感はあるが何もないよりかはいいと思った。


「じゃぁ紹介も終わったことだし、今日はもう夜ごはんにしましょう。」


その瞬間何故かすごく懐かしい感じに聞こえた。
そしておなかは正直だった。低い唸り声のような音が鳴った。

 

「まぁ無理はないですね。こんなところに来てこうならないほうが
おかしいですから。とりあえずフライ君と話して待っててください。」

 

そういうとエフさんとアヤさんはキッチンに向かった。


「よし…いったな~」

僕の隣に座っているクリーム色の髪少年は
ニコニコしながら、「外に行こうぜ。」っと僕に言った。


「でっでも待っててって言われたけど…」

 

「大丈夫だよここは安全だしね」

ここ以外は危険なのかと思った。

「いや、まって!」

 

止めようとしたが無理やり手をつかみ玄関まで行かされた。その時だった、上から何かが落ちてきた。

 

「いって!何すんだよコンセント~」


頭を抱えた少年に駆け寄るとそこには白い豆腐みたいなのがくっついた変な生物がいた。なんというか表現しがたい。

 

「っあ聴いてない?こいつはエフさんの相棒のコンセントだよ。
こいつ俺が外に行くことを見越してエフさんが言ったんだなー」

 

僕はコンセントという生物?に近づいてしゃがんでみるとすごくかわいく感じた。大きさはキーボードくらいで目は二つ、しっぽが生えてて白い。あたらしい生き物に出会ってものすごく興味がわいた。すると、後ろにはもう一匹コンセントのような生物がいた。僕は「くっそー」と言っているフライ君に尋ねた。

 

「その後ろにいるのもコンセント。名前は同じなんだよ。みんな『君』と『ちゃん』で言い分けてる。」

 

見た感じメスっぽかった、フライ君は二人の違いとしては
しっぽが二つに分かれていて、頭にリボン。体は君の方は四角形なのに対してちゃんは四角錐のような形だった。しばらく二人を眺めた後
先ほどいたほうから声が聞こえた。

 

「はぁーあ、眠―…」

階段から一人、女性が下りてきた。やわらかい金髪でパーカーを羽織っていた。


「あ!コン姉ちゃんおきてたんだ。」

どうやらコンさんというらしい。背は自分より高く、いかにも気が強そうだった。が一つ気になった。


「あの頭にいるのはなに?」

頭には黄緑色の生き物が座っていた。


「あーあれ?あれはミライっていう妖精なんだけど…」


「おい、フライ!あれっとか言ってんじゃねぇぞ。」

口調が荒い、遠くからでも気圧されそうだ。ポケットに手を入れてこちらに近づいてきた。

 

「あれ?あんた新入り?名前は?」


結構がっつりと会話を仕掛けてくる。

「えぇっとファイルです。」


「ふーんファイルねぇ。覚えた。ミライも覚えておいてね。」

そういうと妖精は降りてきてお辞儀をしてすぐに彼女の頭に乗った。

その後、コンセント君たちが僕の肩に乗ってきた。
実際の所重い。何やらダイニングを棒のような手で指していた。そして香ばしいにおいが漂ってきている。どうやらご飯ができたらしい。

 

「お前ら、飯食いに行くよ。」

っと言われ、重りを二つ両肩に乗せダイニングへ向かった。