Memory of your Voice Ⅵ

「あ!…夢か」


初めての朝、昨日のことがあり恐らくつかれていたのだろう。
話の後すぐに眠ってしまった。

「ふぁ~あ。どーしたの?」

隣に寝ているフライ君が腕を伸ばしながら言った。

「あ、ごめん。なんでもないよ。」

起こしてしまったようで申し訳ない気持ちになる。

「起きたら降りよ―ぜ。ココ暗いし」

この部屋に入る光は天井の窓から入るたった一本の光だけでその周りは夜のように暗い。確かに朝にこの部屋で居座るのは気分が乗らないと思った。
まだだるけた体を起こし筋肉を伸ばすと、フライ君と共に部屋を出た。

ドアを開けた瞬間、眩しい光と木の優しい匂いが体を包んだ。
そしてなにやら香ばしい、いい匂いが漂ってくる。

 

フライ君が階段を降りていたので後ろからついていく。
向かっているのはダイニング。その奥ではアヤさんが朝ごはんの用意をしていた。

「おはよう。あれ、フライ君今日は早いんだね。」

「いつもはもっと遅いんですか?」

「えぇ、あと3,4時間くらいは寝てるよ、ほんと珍しいね。」

彼女は作る手を止めずに微笑んだ。リビングにある大きな時計を見ると、ちょうど7時を指している。

「え、結構寝るんですね…。」

さすがに、10時11時まで寝れる自信がない。よくそんなに寝れるなと思う。

「ん…6度寝ほど気持ちのいいことはないよ。」

っとクリーム髪の少年は言う。
すると階段から誰かが降りてきた。


「お、起きてたんだね、おはよう。」

僕はその場でおはようございます。と言った。
階段を下りきり、姿が完全に見えると、ふと笑てしまった

(なぜだろう、服は決まってるのに髪の毛がぼさぼさ過ぎる)

彼の頭は、羊の毛のようにもじゃもじゃで昨日の綺麗な髪型とは違かった。

 

アヤさんが料理を持ってきて、着席した。

「コンさんはいいんですか」

コンさんがいない。すると、エフさんが

「コンは朝に弱いんだ。だからもっと後だよ。」

昨日もそうだが、基本的に部屋にいるようだった。

「とはいっても、フライ君程ではないよ。」

からかうようにエフさんは言った。

 

朝食を済ませ、僕はエフさんと外の少し開けた所に行った。
そこは周りが木でおおわれており、根本は草が多い茂っている
そんな、広場でこれから僕はいざというときのために……
持っていた荷物をあさり、エフさんから一冊の本を渡された。


そこには『Armor』と書かれている。

「これはいったいなんの本ですか?」
これが戦うときにどう役立つのか、僕にはまだ理解ができなかった。


「まぁそれを開けて、このペンでサインをして。」

っと言われ本を開く。ページには名前を記入するところと、色々な文章が書かれていた。

だが...僕は名前がわからないのにどうすればいいのか。
ファイルという名前はあるが、それはあくまで‘あだ名‘のようなものだし…


「あの…名前ってどうすれば…」


「あぁ、えっといいにくいんだけどそれ、名前とか関係なしに自分で書いたらいいから
特に考えなくていいよ。でも本には名前を入れると書いてあったからね。」


なんか、雑だなぁ。っと思ったが、とりあえずファイルと書いた。

すると本が勝手にページをめくりだし、あるページで止まった。


そこには白いローブと大きな黒い鎌、そして白い洋服のような物が描かれていた。

「今開かれてるページに書いてあるのが君の武器と防具だ。それを駆使して戦うことになる。」


僕が鎌を使う?しかも白い服で?こんな細い腕でうまく扱えれるのか?
そんな今更なことで不安になる。


「いい?ここから難関なんだけど…」

覚悟をする。何をするのか、それにどうやって武器を出すのか。

「とりあえず今のページを綺麗に破いて。」


そう言われ、きれいに切り離す。僕はこうゆうのは器用らしい。


「そうしたらなんだけど、それを食べるんだ。」


え?食べるって言った?僕は山羊じゃないのに?

驚きすぎて口が悪くなるところだった。

「え、でも食べるって本当なんですか?」

「うん。まるごと一気に。そうじゃないとだめなんだ実際僕もやってるけど、口に入れる前は、吐きそうなんだけどその紙なぜが口に入れると溶け始めて、体に吸収されるから食べるというより口に入れるが正解かな。」


そういわれると、気持ちは多少楽になる。飲み込むわけではないようだ。

「じゃぁ、行きます……ハゥッ」

口に入れる、紙の苦みと匂いが広がり気持ち悪い。

かと思っていたが特にそうでもなかった。そして1分くらいたつとだんだん体に吸収されてるのがわかり、2分程度で無くなってしまった。


「よし、できたね、そうしたら、さっきの…君の場合鎌だね。
それを手に持つ想像をしてみて。しっかりと手に棒を持つ感じに。
多分相当重いから覚悟はしてね。」

 

言われるがまま想像する。さっきの黒く柄の長い大鎌。
そして一緒に白い服も想像してみた。

 

少しずつ体がふわふわとする感覚になり、手に徐々に重みを感じるようになる。
そして金属特有の冷たさも感じ、気づくと手に大きな鎌。

そして服はさっきの純白なローブが体を包んでいた。

 

「服も一緒にできるのはすごいよ !いい?鎌も刃物だし、服は防具だけど
もちろん耐久もあるから。一回元の服にしてから、まただし直せば治るけど
短時間で再展開すると、体力が失われるし、しかも時間もかかるからね。あまりお勧めはしないよ。」

 

僕は自分の武器を何回もみて準備をした。
「じゃぁ、始めようか。」

そういうと、エフさんは大きい石の柱を切るように僕に指示した。

僕は言われた通り、鎌の刃の部分が自分に当たらないように、石に向かって思いっきり切りつけた。すると、衝撃波とともに石が綺麗に切れ倒れた。

「うん、十分な性能だね。あとは経験あるのみ。」

そういうと、自由に切ったり、振ったりしていいと言い、僕を遠くから、まるで監督のように見守っていた。


折角なら期待にこたえたい。そんな気持ちで鎌を振り続けた
ぎこちなく寒天のような鎌は岩を避けるように空気を切り裂いていた。


「はぁ…はぁ。(こんなんじゃ…)」

完全に敗北。敵どころか武器がつかえなければ意味がないじゃないか!

そう心の中で叫んでいた。

ふと右を向くとエフさんはずっと真剣な眼で見ていた。
それは僕を試しているようにしか思えなかった。

僕が口にした言葉。
「次は僕が守る番になります」この言葉を言った時の覚悟はあるのか。
恐らくそれを試しているのだろう。

「絶対に負けない。…」

いつでも僕はあきらめることができた。
そして逃げることも出来た。でもそんなんじゃ…と心は熱として僕に語り掛けてきた。


その後も僕は鎌を、そして心を振っていた。
夕焼けに輝く刃と熱を持った心のしんを両手に持ち振りつづけていた。


ランプが目立ち始めもう空は藍色になっていたころ
僕は手を止めた。いや止められた。


エフさんがいた所にはアヤさんが立っていた。
気づかなかったが家にでも戻っていたのだろうか。


だが一つ僕はアヤさんの目が輝いてることに気づく。

「本当にありがとう...帰ろう、今日は。」

彼女は泣きそうだった。

 


僕は何故なのかわからなかった。

 

 

そして自分の体を見ると、おそらく鎌が体に当たっていたのか、白いローブは赤黒い斑点が浮かびあがりそして岩は石ころの大きさにまで砕かれていた。

 

その途端急にあたりが暗くなり、

 

そして疲れに任せて気絶した


あとから聞いた話だと、何もない所に、向かって鎌を振り
エフさんは岩が粉々になるところでやめさせようとしたが
耳には届かず、アヤさんに相談に行ったという。

恐らくだが、急に強力な力と激しい感情がぶつかり合って
意識がなかったのだという。
だが「まぁそのうち慣れていくだろう」とエフさんは笑いながら言った。

 


一日を終え、部屋に戻ると、フライ君が何やら作業をしていた。
それは僕の鎌を振る姿を写真にして撮ったものだった。

その時の目は見えなかったものの、歯を食いしばり、そして完全に鎌はわき腹に刺さっていた。すこし刺さっていたところが痛くなる感じがした。


だがその傷はない。アヤさんが治したわけでもないそうだ。
僕は今手にしている力の強大さを感じ恐怖した。

本当に使いこなせるのか。これが戦闘中に起きたら僕はどうなるのか、検討は付かなかない。


ベットに横になると、すぐに深い眠りについた

 

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