Memory of your Voice Ⅱ

 

【第二節・出会い】

 

「いらっしゃいませ。ようこそ図書館へ。」

突然扉が開いた。その下には一人。
逆光に遮られ、よくは見えなかったが、背の高い人。声からして男の人だろかそんな予想がつく。しかし

「あの、ここどこなんですか。」

光に照らされ頭やられたのか初対面の男にそんなことを聴いていた。

男は泣きそうな僕の手を取りこういった。

 「まぁまぁお客様お泣きにならないでください。ここではなんですからこちらへ。」

そして彼に案内されるまま、潤った眼をした僕は扉の中へ入った。
・・・・・・

中に入ると、そこはとても広く明るい空間だった。東京ドームなんて比にならないほどの広さ。奥のほうはかすんでよく見えない。それほどの距離はある。

 恐らくさっきの所も同じように広かったのだろう。そう思っていると、あの階段を見つけて良かったと思う。

「こちらにお掛けください。」

そういうと長身の男はいつ淹れたのか飲み物をテーブルに置き、ソファの横に立った。先に言われたまま僕が座ると、長身の男も座った。そして、少し沈黙したあとこう話し始めた。


「改めましてようこそ。わたしはこの図書館の館長をしていますエフといいます。」

さっきまで顔が見えなかっが、とてもかっこいい。深い蒼色の目と髪、いかにも成人の男性という感じであった。

「あなたのお名前は?」

当たり前だがそういわれ僕は答える。

「はい、僕の名前は…」

息が詰まる。そして僕は自分を自分で疑った。同じことをもう一回心の中でいった。おかしい自分名前が思い出せない。何かもやがかかったみたいで気持ち悪い。

 困惑する僕を見て。館長は、「これはまた珍しいお客様ですね」っと平然そうに口にした。

あれ?何も言わないの?おかしいはずなのに。

 記憶の中にポッカリと空いたその穴に僕は落ちてしまった。

 そして話を彼は続けた。

「名前は思い出したらでいいですよ。とりあえずこの図書館の説明を致します。」

続けて説明した。 

「ここは無限に続く図書館、この世界のあらゆることが記された本があるところです。ありとあらゆる情報が本として、それらは可能性を秘めている。ここに来られるお客様はこの場所で目的を達成するためにおとづれます。もちろん彼らは自由に来れるわけではありません。なにかがきっかけでこの空間に迷い込むのです。」

僕には理解が間に合っていない。あらゆることが本に?それに無限に続いているなら他にもまだ人が…

だがこの考えはすぐに消えることになった。

 「しかし、お客様はいつまでも入れるわけではございません。特別な条件を除き、時間までに達成できなければお客様に死が訪れます。」

「え?ってことは僕も?」
この瞬間恐怖が僕の背後から突き刺した。死ぬのか? というか目的とはなんだ?突然迷い込んだ僕は何も目的はないのに。

 「ですが...」
なにか怪しげに彼は言った。

「あなたはその特別な条件にあてはまり例外なんです。」

 安心させるためか、彼は少し笑顔で告げた。

 「え?、どうゆうことなんですか?」

「はい、ここに来るお客様は目的を明確にした状態で訪れます。しかしあなたは不透明。目的を探し達成する必要があります。この場所ではこの場合を例外ととらえ、死ぬことはないのです。」

「でもどうすれば...その目的を見つけられるのですか?」

 「簡単です。あなたの本を見つけここに来る前の記憶を読みあなた自身が思い出すこと、これが方法です。なので、ここであなたの本を見つけるために暮らすのはどうでしょうか。」

へ?っと思った。ここで暮らす?そんな簡単な話があるのかと心の中で思った。

「ここで、本当に暮らせるんですか?」
率直な疑問だこの場所に食料はあるのか?それに時間軸という概念があるのか?

「問題ないですよ。実際僕と司書さんたちで暮らしてますから。」

他に仲間がいるとわかるとすごく安心する。少し誰がいるのか気になる。

「では僕たちの場所にご案内いたします。」

 

これが、この物語の始まりだった。